薬を医薬品として承認されるためには、種々の実証試験で効果が認められなければなりません。
その一つに二重盲検法があります。これは薬と偽薬(デンプン等)を使用比較した状況で、有意な効果の差の有無を見るための試験です。この試験の目的は、偽薬(デンプン)でも信じて服用すると、個人差はあっても効果が見られるため、これを排除して医薬品としての効果があるかを判定します。
この効果は「プラセボ反応」と言われ、思い込みや自然緩解により発生します。この自然緩解(自然治癒力)を排除して成り立っているのが西洋医学で、この自然緩解を利用しているのが東洋医学と考えられます。
自然治癒力は、その人が生活している環境の良し悪しと、生活習慣の質によって決まります。
現代社会は、移動や労働が機械に置き換わり、仕事や人間関係でストレスに曝され、物質的豊かさの追求が精神の貧困を招き、自然破壊による環境汚染が生じ、薬の乱用が医原病と耐性菌の増加を引き起こしています。
この状況で健康でいることは難しいし、どんな病気が発症しても不思議はなく、自然治癒力の低下は避けられないと思います。
自分が持つ自然治癒力を利用し、発症した症状や病気を自分で治せるかどかは、症状の捉え方に係っています。
自然治癒力が働くためには、体が健康であることです。
「健康の運用定義」は人間を構成している要素や力が、調和的に平衡状態にあること、となっています。
体の状態と取り巻く環境は毎日変化しています。体は、その変化に対応し健康な状態に戻すため、一時的にバランスが崩れるようにできています。その一時的に崩れたときに、体調の変化として症状や病気が起きることになります。
だとすると、この症状や病気は、健康になるために必要な変化が起きていることを知らせる注意信号、と捉えることが最も合理的だと思います。
この時に薬を使うことは、信号のスイッチを切って、無かったことにしているだけですので、治らないばかりか、更なる悪化は避けられないことになります。火事の時に警報機のスイッチを切ったとしたら、どんな結果になるか想像がつくと思います。
症状や病気の原因は人それぞれです。自己の生活習慣や環境を振り返り、思い当たる原因を改善することで自然治癒力を働かせることが可能と考えます。あとは、体の変化の状態と症状や病気の程度により、どの程度の自然治癒力が必要か決まります。
東洋医学は自然治癒力を最大限引き出す治療法です。
鍼か生薬を利用し、病気の根本的原因を改善し、健康に導きます。
東洋医学は東洋思想をベースにしています。自然と共存することによって、自然の力を利用する考え方です。
自然の力として内在している自然治癒力の元であるエネルギーを、東洋医学では「気」と考えます。健康であるためには、気が全身を巡り、それぞれの器官に適量の気が流れ、適正に働く必要があります。
この気の過不足は、器官の不全と全身の不調和を招くことになり、この状態を病気と考えます。
接触鍼治療は、全身の不調和を「ゆがみ」と捉え、体表の「ゆがみ」が取れるための必要な部位に鍼を当て、変化を見ながら、「ゆがみ」が取れたときに、体にスイッチが入り、自然治癒力が働きだすことで健康に導きます。